ジョンブルグジカ

ジョンブルグジカ

  • ジョンブルグジカジョンブルグジカは水辺を好んで生活していた、大きな群れを作って、下草の茂っていない森に入っていることもあったが、水から遠くはなれることはなかった主に早朝と夕暮れに食物を取り、暑い日中は木陰などに横ばいになり反芻している、食物は水生植物から低木の葉、草類などで、水生植物を取るときは水中に腹まで浸かって食べた、ジョンブルグジカは水中が安全だと考えていて、森の中でトラやヒョウなど敵に追われると水中に逃げ込んだ、妊娠期間はおよそ7.5ヶ月、1産1仔、子供は6ヶ月から8ヶ月授乳され、2、3年で性成熟するなど普通のシカに似ている。
    20世紀に入ってからずっと、ジョンブルグジカは絶滅寸前の状態が続いていた、タイ南西部に広がるパクナンポー周辺の大きな湿地帯に、ジョンブルグジカ最後の個体群が生き残っていた。
    それというのもジョンブルグジカのもつ習性と立派な枝角がジョンブルグジカを絶滅に追いやってしまったのだ、つまり枝角はハンティングの見事なトロフィーであるから、ハンターは水牛の背に乗ったりボートに乗ったりして、ジョンブルグジカを追う、するとシカは遥か昔からそうしてきたように水のあるところに逃げる、どんなにそっちに危険があったとしても昔からそうして生き延びてきたのだから仕方がない。
    沼に入り込んだハンターをハンターは深みへ深みへと追い込む、水深の深いところでは、さすがに敏捷なシカも動けなくなってしまう、だからハンターは簡単にジョンブルグジカを手に入れる事が出来るのである。
    ジョンブルグジカが絶滅した原因にはもうひとつある、このシカが好んで生息した湿原は、水田に変わりやすい土地である、人口が増加し耕作地の拡大が必要になると、人間は真っ先に湿原と水辺の草原を開発するものである、この事実はたとえば日本では北海道の釧路湿原や千歳の低地が開発の波に洗われようとしているし、世界的には湿原の保護を目的にしたラムサール条約が存在することでもわかるだろう。
    ともかく住み場を失ったシカは森に入っていき、そこで生活を試みた、彼らにとっては森ならどこでもいいのかというとそうでもない、下生えの少ない森という条件があったのだ、それは立派な枝角があったからだろう、見事な角は林内でのシカの行動を妨げた、藪を通り抜けるのが困難だったのである。
    1931年、枝角を取ろうとする一人の男に1頭のシカが殺された、まさかと思われが、以来ジョンブルグジカを見たという人はいない。


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